2019.10.07.Mon

夢に見たSFの世界はもう目前

空飛ぶクルマが変える未来の社会

「電車やタクシーじゃ間に合わない? それなら飛んでいけば?」。比喩でもジョークでもなく、そんな時代がもう間もなくやってくる。
「2023年を境に状況は大きく変わる」と断言するのは、ドローンとエアモビリティ(以下、空飛ぶクルマ)に特化したベンチャーキャピタル「Drone Fund」(ドローンファンド)代表パートナー、千葉功太郎さん。千葉さんが目指す、ドローンと空飛ぶクルマで実現する未来の姿とは?

子どものころに憧れた"空飛ぶクルマ"がスマホで呼び出せる!

千葉さんは、ドローンや空飛ぶクルマが当たり前の社会を実現するため、2017年に「Drone Fund」を立ち上げた。機体はもちろん、コアテクノロジーやサービス開発などに挑むスタートアップへの投資を行っている。
壮大な空の世界を学ぶため、個人で小型飛行機を購入し海外で飛行訓練を受けるなど、並々ならぬ思いで空の産業化を目指している。千葉さんが考える、ドローンや空飛ぶクルマが日常的にある社会とはどんな姿なのだろうか。

千葉さんが想定する未来の東京の空。大小さまざまな空飛ぶクルマやドローンが飛び交う。こうした光景が当たり前になる時代が間もなくやってくる

「上のイラストと同じようなイメージです。空飛ぶクルマもドローンも日常的に飛んでいる状態ですね。1年半くらい前に描いてもらったイラストですが、その時はだいたい2025年から2027年くらいでの実現を予想していました。でも、それがかなり前倒しに進んでいて、2023年には一部実現できそうです!」

千葉さんが「2023年」と言い切るのにはわけがある。2019年6月21日、安倍内閣がドローンおよび空飛ぶクルマに関する重要な閣議決定を行ったからだ。

「閣議決定には、ドローンの『2022年度に有人地帯における目視外飛行(※)によるサービス実現を目指す』『2023年度に空飛ぶクルマ(エアモビリティ)の事業化を目指す』という2項目が含まれたんです。具体的な時期や実現内容を明記しているのは、先進国では日本が初めて。この5年で、日本におけるドローンや空飛ぶクルマを取り巻く状況は一気に加速することは間違いありません」

※目視外飛行:ドローン内蔵カメラなどで撮影した映像をリアルタイムでモニターに映し、その映像を使って操縦する

こういった新しい産業において日本は世界より出遅れていると思いがちだが、そんなことはない。むしろ世界に先駆けて空飛ぶクルマの実用化を目指している。

「スマホアプリを起動して空飛ぶクルマが利用できるようになるのはもはや時間の問題です。子どものころに見たSFアニメに描かれた未来が、ようやく現実のものとなるわけです。想像するだけでワクワクしてきませんか?」

近未来の移動は空飛ぶクルマで楽々通勤?

では、これからどのようなサービスが登場し、私たちの生活はどう変わるのだろうか。まずは、移動に革命を起こす、空飛ぶクルマについて伺った。

「まずは富裕層向けのサービスが先行するでしょうね。日本を訪れた海外の富裕層が、空港から観光地、観光地から観光地へと飛び回る。各地を効率的に巡るためのプライベートジェットのようなイメージです。都市部でも、ターミナル駅と空港、ビルとビルを結ぶ定期便のような利用も早い段階から実現できると思いますよ」

北海道から沖縄まで、今までより短時間で多くの魅力的な観光地を周る体験が可能になるかもしれない。

「その次の段階が一般向けのタクシーのような使われ方です。空飛ぶタクシーの事業化を検討しているUber(ウーバー・テクノロジーズ)は、2026年ごろには1kmあたりの移動コストをハイヤー並みにし、さらに段階的に下げながら最終的には電車賃並みの利用料にするという大胆な見込みを公表しています」

かなり強気な価格設定にもみえる。そうなると、通勤スタイルも大きく変わるだろう。毎朝つらい満員電車に揺られることもなくなり、地方都市から都心への通勤だって可能だ。住居の考え方も変わってくる。

「技術的な面や、安全性をいかに担保するかなど解決すべき課題はあります。しかし、すでに有望な解決策が提示されはじめていて、技術開発も急ピッチで進んでいるので、近い将来での実用化は十分可能だと思っています」

2029年には街中で空飛ぶクルマを見る機会が増えるだろう。千葉さんが運営するDrone Fundの出資先のひとつであるSkyDrive(スカイドライブ)は、最初の発売価格を4000万〜5000万円程度になると想定している

空飛ぶクルマは主にライドシェアサービスによって普及していく想定だが、一方で、超高級スポーツカー並みの4000万〜5000万円程度の価格で販売される計画もある。市販から5年、10年経てば、手が届くような価格の空飛ぶクルマも登場してくるという。未来の社会では、空飛ぶクルマを使ったロマンチックな夜間飛行デートを楽しむカップルも現れるかもしれない。

ドローンが欠かせない日常がやってくる

では、ドローンはどのように進化していくのか?

「主に物流や道路・ダムなどでの保守点検、あとは農業分野での活用が進んでいくでしょうね。それと並行して、生活の身近なサービスでもドローンは活躍します。犬の散歩を代行してくれるドローンや日傘、雨傘として使えるドローン、通学中の子どもを最寄り駅から自宅まで見守ってくれるドローンなど、さまざまな場面で利用できるはずです」

それらのドローンサービスはすべてスマホアプリで呼び出すようになると千葉さんは見ている。

「ドローン前提社会では、自分のスマホにさまざまなドローンアプリが入っていて、そのアプリを使ってドローンを呼び分けるようになります。女性だったら重い荷物とか大変ですよね。そんなときに、重い荷物を運んでくれるドローンをアプリで呼び出すんです。未来では毎日何かしらのドローンサービスを利用する社会になるかもしれません」

生活に密着したドローンサービスは、ユーザーが必要に応じてサービスを使い分けるシェア型の利用が主流になるだろう

ドローンが犬の散歩をするシーンは1989年公開の映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』でも描かれていた。ツッコミどころがないわけではないが、千葉さんによると中国のドローン最大手であるDJIが、すでに類似するサービスをビジネスモデル特許として出願しているという。ドローンを活用することで、ビジネスのアイデアもグッと広がるのだろう。

しかし、いろいろなサービスが生まれていく一方で、安全性の問題も無視できない。

「どのような条件がそろうと墜落や衝突のリスクが高まるか、それを知るには実証実験を繰り返し、ログデータを収集、解析することが大事になってきます。世界的に見ても、まだまだデータの蓄積量や実証実験が足りていないのが現状です。空飛ぶクルマ、ドローン領域における覇者は、このデータを制した人になるかもしれません」

2040年代には『天空の城ラピュタ』のような世界がやってくる!?

千葉さんは、空飛ぶクルマ、ドローンを活用したサービスが、どんどん広がる状況をインターネットが出現した時と似ていると言う。

「多くの人が見ているのは、空撮できるとか、ドローンレースがかっこいいとか、無線操縦としてのドローンですが、私たちは、ドローンをインターネットと全く同じ社会インフラだと考えています。物理パケットが空を飛び、荷物も運べるし、データ観測もできる。それを利用してどんなアプリケーションをのせるかは、インターネット企業が作るサービス次第です」

インターネット黎明期にも多くのサービスが現れ、既存のサービスを打ち倒し、今では巨大産業になっている企業がいくつもある。

「2020年代中盤からは、カンブリア爆発みたいに一気にいろんなサービスが現れるはずです。すでにインターネットはあるわけですから、スピード感は当時のインターネット黎明期よりも何倍も速く膨れ上がっていくでしょう」

ここまで2020年代に起こることを中心に話を進めてきた。さらに20年先にはどのようなことが起こっているのだろうか。

「予想が難しいですが、空で暮らすことができると思っています。というのも、今年8月から高度20kmを数カ月間にわたって飛び続ける無人飛行機の実証実験が、ハワイ州ラナイ島で始まったんです。長期間、燃料を補給する必要もなく飛び続けることができれば、やがて『天空の城ラピュタ』のような世界が実現するかもしれません。空を漂うように暮らすなんて、SFアニメそのものですよね!」

「インターネットの普及と状況は似ているので、いずれDrone Fundで出資している企業の中にGoogleのような会社が生まれる可能性だってあります。まだ始まったばかりの産業なので、新しいことに挑戦したい人には刺激的な世界だと思います。空飛ぶクルマ、ドローン業界の未来は、まさにブルースカイならぬブルーオーシャン(競争相手が少ない未開拓の市場)が広がっているんです」

Drone Fund
創業者/代表パートナー
慶應義塾大学SFC特別招聘教授
個人投資家
千葉功太郎さん
慶應義塾大学環境情報学部卒業後、株式会社リクルート(現・株式会社リクルートホールディングス)に入社。株式会社サイバード、株式会社ケイ・ラボラトリー(現・KLab株式会社)を経て、2009年株式会社コロプラに参画、同年12月に取締役副社長に就任。採用や人材育成などの人事領域を管掌し、2012年東証マザーズIPO、2014年東証一部上場後、2016年7月退任。国内外のインターネットやリアルテック業界のエンジェル投資家(スタートアップ60社以上、ベンチャーキャピタル40ファンド以上に個人で投資)でありながら、2017年6月からDrone Fund 創業者/代表パートナーを務める。 2019年4月より、慶應義塾大学SFC特別招聘教授に就任。
取材・文:武田敏則(たけだ・としのり)
1970年、東京生まれ。1990年、武蔵野美術大学短期大学部美術科卒業後、ソフトウェアのUIデザインや広告デザインなどを経て、求人情報サービスを手掛ける株式会社キャリアデザインセンターに入社。制作部次長、エンジニアtype編集長などを経て、2006年、株式会社グレタケを創業。ITエンジニアや企業経営者などを中心に取材・執筆を行う。
写真:友田和俊(ともだ・かずとし)
編集・取材:都恋堂
Web、紙、SNS、イベントなど様々なコンテンツの企画から運営までを行う制作会社。「価値あるコンテンツと連動してFANをつくる」をモットーにエンドユーザーの視点と裏取りのある1次情報にこだわった泥臭い制作スタイルが特徴。全国26,000人の働く女性が集うコミュニティ・メディア「女子部JAPAN(・v・)」の運営もしている。

#06 2030年、私たちはクルマで空を飛べるか?

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