2020.01.14.Tue

FQ×文化放送 連携企画第二弾
ゲスト:寺久保拓摩さん(ベンチャーキャピタリスト)

なぜ、アフリカが「熱い」のか?

アフリカと聞いてどんな言葉を思い浮かべるだろう?
「サハラ砂漠」「内戦」「暑い」「遠い」「発展途上」……。例えばこのようなイメージだろうか。

確かに国・地域ごとに抱える内戦や貧困など解決されていない問題は多い。一方、スタートアップの起業が相次ぎ、ビジネスが勃興しているという現実もある。今回、FQと文化放送の共同企画(12月10日放送の「浜松町Innovation Culture Cafe」内)では、ベンチャー・キャピタル(VC)を率いる寺久保拓磨さん(28)をゲストにお招きした。寺久保さんは、アフリカで事業の立ち上げを支援し、ビジネス拡大が見込める会社には出資をしている。なぜ活動の場としてアフリカを選んだのか? 「アフリカは情報革命から始まったから面白いんです」と語る寺久保さんに、足元のアフリカのビジネス事情、今後の展望を語ってもらいました。

【出演者】

パーソナリティ
入山章栄(早稲田大学ビジネススクール教授)

ゲスト
寺久保拓摩(ベンチャーキャピタリスト)
宮内俊樹(Yahoo! JAPAN FQ編集長)

「売り上げや時価総額でない評価軸」を求めて

寺久保さんは、少年時代に米同時多発テロ(2001年)やイラク戦争(2003年)をニュースなどで目の当たりにし、「なぜ争いが起こるのか」「互いに経済的な結びつきが強まれば平和になるのではないか」との思いを抱き始めた。

当初からVCで働こうと思っていたわけではなく、漠然と「大学卒業後は起業しよう」と考えていた。転機となったのは大学時代。バングラデシュで貧困層へ少額融資(マイクロファイナンス)を通じて、生活の自立を支援するグラミン銀行にインターンとして働いたことだ。

「世の中に売り上げや時価総額だけでなくて、それ以外でも評価される軸ってなんなんだろうと考えたときに、たまたま、(代表のムハマド・ユヌス氏が)ノーベル平和賞をとった銀行があるってことを知って、自分で見に行きたいなと。お問い合わせフォームに『学生で、夏休みに3カ月くらい行かせてほしい』と、送ったら、5分くらいで返信があって『来ていいよー』って言われたので行かせてもらいました」

寺久保さんは淡々と語るが、入山教授は「もの凄い経歴ですよね」と驚嘆。さらに28歳と年齢を知り「若い。なのに落ち着いていますよね」と続けた。

寺久保さん、宮内編集長

寺久保さん(右)とFQの宮内編集長

グラミン銀行の現場で寺久保さんが目の当たりにしたのは、医療、エネルギーなど多岐にわたる社会課題が山積している現状だった。

「(自分で会社を立ち上げて)1つ1つの課題に向きあって解決まで導くとしたら人生が何年あっても足りない」

一方で、「国が発展するための仕組みを、企業が作っているのが面白い」との思いも抱き、社会課題と向き合っている多くの企業とタッグを組んで、同時並行で複数の問題を解決していくことができるVCという立場を選んだ。

寺久保さんは2018年にルワンダに移住。いまではケニア、ウガンダ、ルワンダ、ナイジェリア、ガーナ、南アフリカに活動範囲を広げている。そのため、当初ルワンダに構えていた家も手放し、転々としながら多忙な生活を送っている。

情報革命から始まったアフリカ

「アフリカが世界と比べて面白いのは、情報革命から始まったというところです。(中略)いきなり通信がきて、スマホが誰の手にもわたっていて、そこから社会の仕組みをどう作っていくのか、というのがいまのフェーズです」(寺久保さん)

たしかに、日本を含むいまの先進国などは、農業革命で食の安定供給ができるようになり、19世紀に産業革命が起きて製造業が発達し、その後に情報通信環境が整っていった。アフリカでは農業・産業革命を経ずに情報革命が起きたということだ。

寺久保さんは続ける。

「実際ケニアでもスマホの普及率が57%くらいと言われていて、モバイルは94%・95%くらい。通信環境も整っていて、日本より通信速いんじゃないかっていうくらいに、どこでも繋がる状態になっています。送金もそうですし、人の生活のあらゆる面でスマホが入り口になっています。どんな貧困家庭でもスマホや携帯は絶対持っているというのがいまのアフリカの現状です」

放送中の様子

放送中の様子。右端が寺久保さん

「貧困はあるんだけど、一方である意味日本より進んでいるところもあるというのがアフリカの魅力なんですね」

入山教授が思わず反応した。そして、こう続けた。

「アフリカって貧しい方は銀行の口座を持てないんですよね。だけど、モバイルを持っていると、それでお金のやりとりが銀行みたいにできるようになっていて。いまは情報通信産業が銀行に参入してきているんですよね」

寺久保さんは頷きながら返す。

「そうです。サファリコムと言う通信会社が『エムペサ』ってモバイルマネーを国中に普及させていて、どんな小さい路面店でも番号が書いてあって、そこに送金すると決済が完了するという仕組みが本当に国中に広がっているんです」

「住所がない」 不便を利点に

いまはどのような社会課題と向き合っている企業に投資しているのだろうか?

寺久保さんは一例を教えてくれた。

「いまのアフリカの市場ってインフラを作っているのがスタートアップになっているんですよ。具体的には物流領域。アフリカって住所がないんですよ。住所がなくて、ラストワンマイル(本人がいる場所や家に)まで物を届けるということはないんですね。一応郵便局はありますが、それでは足りないですし、非効率だし、みんな郵便局まで取りに行かないといけないし、しかも突然破棄されていたりとか......」

「これだけ住所がない中でもう一度住所を引き直すのかというと難しい。そのなかでスマホをみんな持っているんだから、スマホを軸に一人一人にデジタル住所みたいなのを与えてあげて、位置情報ベースで物を届ける。例えばカフェで仕事をしていても、ここに届けてくれって言ったら届くし、家にいても届くし、家の近くのキオスク(売店)に届けてもらって、後で取りに行くこともできる」

入山教授

番組パーソナリティの入山教授

ここで入山教授から再び質問が。

「日本であっても本当はいいはずのサービスじゃないですか、いまの話って。ただ、アフリカは住所がないから、情報革命から始まっているから逆にこういうのがやりやすいということなんですよね」

寺久保さんは言う。

「向こうに行って感じるのは、すごく効率的でコストが安くて、この仕組みって日本でも当てはまるんじゃないかなって思っていて。日本の地方も、過疎化が進んでいって。いまの物流がアセットを持ち続けられないという時がくると思うんですけど、こういうソリューションって、アフリカ発で日本に持ってくることができるんじゃないかな、と(考えています)」

救急車の配送・手配もスタートアップが

寺久保さんによると、アフリカでは救急車を呼ぶのも日本の「119」のような公共サービスがないという。

「救急車を呼ぶ仕組みを実はスタートアップが作っていたりするんですよ。救急車を呼ぶUberみたいなのがあって。いままでは各病院に自分で電話しないと救急車がきてくれなかったんですよ。かつ、住所がないので、いま自分がどこにいるって伝えられなかった。その中で、スタートアップが電話を受け、患者がどこにいるか遠隔で救急車のドライバーに指示しながら、この道を右に曲がっていけば患者さんがいるからって。しかも、着くまでの間に患者さんとコミュニケーションをとりながら、どこの病院に搬送するのが一番いいのか判断したりとか」

これを聞き、入山教授は「ある意味、固定電話よりも便利ですよね。GPSで場所が分かって、着くまでの間の治療ができるって」と驚いた様子で語った。

FQの宮内編集長も「日本がいままで持っていたインフラって強みでもあるんですけど、これだけテクノロジーが変わっていくと、それがある種の負債になって、技術を新しく生み出せないということもあるので、アフリカがどこまで進化しているかって学ぶとすごくいいし、とにかく面白いですよね」と話した。

支援する企業の見分け方

寺久保さんは、「アフリカの色んな産業をみていて、必要な要素は3つある」と語る。何だろうか?

(1) いかに個人や企業をエンパワーメントして職を作って生産性を上げて、収入を増やすか
(2) 物と人の移動をどれだけ効率化してコストを下げるか
(3) 需要と供給の最適化

3点を総括し、寺久保さんは「限られたリソースをどれだけ最適化し、経済効率を最大化させるか。この3つの要素が農業においても医療においても重要だなって思っていて、そういうところを支援しようと思っています」と強調した。

寺久保さん

アフリカ投資に熱視線

直近の傾向として、米ツイッター創業メンバーのジャック・ドーシー氏や、アリババ創業者のジャック・マー氏もアフリカに熱視線を注いでいる。

単に市場としての期待だけでなく、人口規模の増加が見込まれる点(現時点で11億人あまり)や全体で25歳以下が60%くらいを占め、デジタルネイティブが多い点などが魅力的に映るからだろう。

寺久保さんも、2019年8月に公開したFQの記事(https://fq.yahoo.co.jp/Africa/3.html)内で、「アフリカへの投資タイミングとして3年後はもう遅いかもしれない」と語っていた。その真意は?

寺久保さん

寺久保さんは言う。

「アフリカでは長く、頭脳が流出していると言われてきた。優秀な人が海外の大学に留学にいって、そのまま帰ってこない、と。しかし、ここ数年で企業環境が圧倒的に変わって、いまがチャンスだって。例えば、ハーバード行って、グーグルに就職して何年か働いてから帰ってきて起業するという事例が増えてきている。世界のトップレベルで経験を積んだ人たちが起業し始めているのが、いまのアフリカの特徴かなと」

現地にいる身として、日本企業とアフリカの会社・働き手との「接点を作りたいと思っている」とも語った。

「やっぱり現地にいると、欧米、中国の企業ってたくさん来ているんですけど、日本からまだまだ来ない。(投資は)『東南アジア、インドが先だよね』という意識があって、そこで止まっちゃうケースが多いんです。でも、スタートアップがインフラを作っていて、そこに欧米の企業、中国の企業から何十億・何百億っていう投資がきている、、というのがいま。(このままでは)日本企業がインフラ関連企業を取れなくなっちゃうのではないか。最後はやっぱり資本力の勝負になっていくと思うけれど、資本力で戦わずに、早い段階から現地の企業を支援して、一緒になって事業をつくっていくというのが日本企業のアプローチとして重要だなって思います」

※放送内容は、以下のURLからご視聴いただけます。寺久保さんの登場は46分ごろからです。

http://podcast.joqr.co.jp/podcast_qr/hamacafe_pod/hamacafe_191210_net_full.mp3
(外部サイト)

<浜松町 Innovation Culture Cafe>
東京・浜松町地域で次々と新しいプロジェクトが生まれ、再開発が進んでいることから、JR浜松町駅の真正面にある文化放送が中心となり、新しいイノベーションが浜松町から生まれることを目的として展開されているラジオ番組・イベント。早稲田大ビジネススクール教授の入山章栄さんらがモデレーターとなって、いま注目の話題から、今後のために考えておかなければならない社会課題までを取り上げる。FQは同イベントとコラボして、毎月第2火曜日のゲストをキャスティング。未来とイノベーションを創る人たちを紹介、発信していく。

#Vol.01 Special Issue Vol.01