2020.03.18.Wed

FQ×文化放送 連携企画第三弾
ゲスト:登嶋健太さん(東京大学先端科学技術研究センター)

VR旅行で、高齢者の課題を解決する

高齢者の課題を、最新のテクノロジーで解決する。Future Questionsと文化放送の共同企画(1月10日放送の「浜松町Innovation Culture Cafe」内)では、高齢者向けのVR旅行を運営しつつ東京大学先端科学技術研究センターで研究を進めている登嶋健太さん(32)をゲストにお招きした。

【出演者】
パーソナリティー
入山章栄(早稲田大学ビジネススクール教授)

ゲスト
登嶋健太(東京大学先端科学技術研究センター)
宮内俊樹(Yahoo! JAPAN FQ編集長)

介護職員から最新のVRの研究室へ

「逆張り」という言葉がある。

もともとは株式投資で使われる言葉だが、事業においてもあえて人がはらないところで展開するからこそブルーオーシャンで伸び代があったりする。

登嶋健太さんの目指す事業はまさにそういう好例であろう。高齢者向けのVR旅行、超高齢化していく日本で新たなニーズを捉えればイノベーションが起こせる。FQの#02「超高齢社会でイノベーションは起きるか?」でもそうした可能性を提示してくれた。

そんな登嶋さんに、FQと文化放送のコラボ企画『浜松町Innovation Culture Cafe』(文化放送)に登場いただいた。

「もともとはスポーツトレーナーになりたかったんです。5、6年接骨院で勤務して実感したのは、お年寄りが多い、そして接骨院にも来られなくなってしまったお年寄りがいるということ。そういう方々になにか役に立つことがしたいと思ったのがきっかけ」

登嶋さんはそう語る。

パーソナリティーの入山さんも、登嶋さんのちょっと変わった経歴に驚く。

VR旅行が始まったきっかけ

とはいえ普段の登嶋さんは、物静かで理知的で、野心満々の起業家というイメージではまったくない。高齢者向けVR旅行をはじめたきっかけを語る口調も、実に淡々としている。

文化放送内のスタジオにて。写真左が登嶋さん、右はアシスタントのたがえみこと田ケ原恵美さん

文化放送内のスタジオにて。写真左が登嶋さん、右はアシスタントのたがえみこと田ケ原恵美さん

「お年寄りの話を聞いていると、未来やいまの話よりも、過去の思い出話の方がうれしそうなんです。元気になったらどこに行きたいですかと聞くと、昔育ったところに行きたいという声が多くて。最初の頃は近所の梅の木が見たいといった要望で、僕が昼休みに写真を撮りに行って見せてあげていたんです。そしたら、そこから記憶が蘇ってきて、ここの近くのベンチで昔息子と座ってたんですよ、とか思い出を語ってくれるようになってきて」

「なるほど、よかれと思ってやっていたらだんだんお年寄りの希望やスペックがあがってきちゃったんですね!」と、入山さん。

そこで、要望を聞いて写真撮りに行くというアプローチから、360度で撮ってどこを見たいかはお年寄りに託すというやり方を思いついたのだという。

そこから、クラウドファンディングで資金を集めたVRプロジェクトを立ち上げて、世界を旅して写真撮影を続けてきた登嶋さん。現在は東京大学先端科学技術研究センター(外部サイト)でVRを体験することで、お年寄りの認知機能や運動機能にどのような変化が表れるのかを研究しているというのは、FQで以前取り上げた通り。

VRとはコミュニケーションである

ここで、リスナー向けに恒例のクイズ。

VR旅行の行き先となる映像の撮影に協力してもらっている人は?
1.大学生 2.団塊ジュニア世代 3.高齢者

もちろん、正解は3.高齢者。

登嶋さんいわく「いわゆるアクティブシニアの方々にVRで撮影いただいてます。カメラ自体が想像以上に簡単になっているので。ワークショップを2年くらいやって、2000本くらいコンテンツが集まってきています」

「そんなにあるんですか!」と入山さん。

入山さんも興味津々

入山さんも興味津々

「やってみるといろんな発見があって。撮ってくださったアクティブシニアの方も同郷で、いまはないけどここはこうだったんだよねぇ、とかシニア同士で故郷のことを話して楽しんでいたりします。VRってコミュニケーションだと思うんですね。ただつくるVRから、もっと深みのあるVR体験になっていく」

ここで入山さんから、FQ編集長の宮内にもコメントがふられると、

「めちゃいいボランティアなので、これ将来やりたいですね。人の役にも立ちますし。僕が寝たきりになっても、誰かが映像を取りに行ってくれたらなお楽しい」とのコメント。

「私のおじいちゃんが82歳でもよく散歩に行ってるので、それすらお役に立てる、喜んでもらえるんじゃないかな」と、たがえみちゃんこと田ケ原恵美さん。

入山さんも「VRと聞くとITの最先端、どうしても高齢者にはほど遠いものだって勝手に思い込んでいるじゃないですか。だけど、登嶋さんのような方が媒介になれば、高齢者同士をVRでつなぐってことができる時代になってきたってことなんですね」と熱く語った。

VRの可能性を大学で研究

「VRはラジオに近いと思うんです。想像力を使いますし、自分で動いて視野を変えられたりもしますから、当事者性が強い。だからその方の自律性があがったり、認知症予防になったり、あるいは昔を思い出すためのコンテンツになる可能性があります」

実際にそうした可能性を、登嶋さんは大学でもいま研究している。小さな可能性、自分だから発見できた可能性にいちずに打ち込める若者の姿は、本当に素晴らしい。

右は文化放送の砂山圭太郎アナウンサー

右は文化放送の砂山圭太郎アナウンサー

アナウンサーの砂山さんから、「これがクリアできたら、さらにイケるという課題はありますか?」という質問に対して、

「やっぱりビジネスとしてしっかり回るという仕組みですね。最終的には自分は介護の現場が好きなので、戻りたいんですけど」と、登嶋さんの答え。

もしかしたら、未来の旅行ではVRは欠かせないもの、当たり前のものになるのかもしれない。子どもたちが海外旅行に行くときもカメラではなくVRで撮影し、高齢になった両親がそれをヘッドマウントディスプレイで見ながら土産話を聞く。そんな光景。

FQ編集長の宮内も語る。
「そうしたパーソナルコンテンツ、個人個人に究極のコンテンツがつくれる可能性が未来にはありますよね」

「なるほど! 高齢者には登嶋さんの横顔とか、僕には娘の顔とか、そういう未来のコンテンツのあり方ができるってことですよね。実に面白い!」と、入山さん。

VRの可能性はまだまだこれからだ。そしてVRはコミュニケーションだという登嶋さんの挑戦はいまも続いている。

※放送内容は、以下のURLからご視聴いただけます。登嶋さんのご登場は47分30秒ごろからです。
http://podcast.joqr.co.jp/podcast_qr/hamacafe_pod/hamacafe_200114_net_full.mp3(外部サイト)

<浜松町 Innovation Culture Cafe>
東京・浜松町地域で次々と新しいプロジェクトが生まれ、再開発が進んでいることから、JR浜松町駅の真正面にある文化放送が中心となり、新しいイノベーションが浜松町から生まれることを目的として展開されているラジオ番組・イベント。早稲田大ビジネススクール教授の入山章栄さんらがモデレーターとなって、いま注目の話題から、今後のために考えておかなければならない社会課題までを取り上げる。FQは同イベントとコラボして、毎月第2火曜日のゲストをキャスティング。未来とイノベーションを創る人たちを紹介、発信していく。

Vol.03 Special Issue Vol.03