2020.02.19.Wed
2040年・未来の担い手
17歳の高校生が想像する未来のあるべき姿とは?
CFO=最高未来責任者という役職が、ユーグレナ社に誕生したのは昨年10月のこと。業務は「会社と未来を変えるためのすべて」。小澤杏子さん・17歳の高校生は、どんな未来描いているのだろうか?(写真:三浦エリ)
現役高校生が上場企業のCxOに就任!
2020年は、日本にとって記念すべきオリンピックイヤーとなる年だ。
だが「Future Questions」は未来を想像・創造するメディアである。だからあえて今年ではなくて、いまから20年後、2040年の年初を想像してみたいと思った。それも、その頃に未来を作っているであろう当事者、若い人たちの意見や未来観を聞いてみたいと思ったのだった。
話を聞くのにうってつけの人がいた。まだ高校生。だが、ユーグレナ社のCFO、最高未来責任者に就いた小澤杏子さん、17歳である。
ユーグレナ社は、藻の一種であるユーグレナ(和名:ミドリムシ)を主に活用し食品や化粧品の販売、バイオ燃料の研究等を行っているバイオテクノロジー企業である。その課題解決型の事業は、発展途上国におけるタンパク質の不足、エネルギー不足も解決しうると期待されている。
そんなユーグレナ社が「未来のことを決めるときに、未来を生きる当事者たちがその議論に参加していないのはおかしい」という問いから導入したのが、18歳以下のCFO(Chief Future Officer)である。業務は、会社と未来を変えるためのすべて。2030年に向けたユーグレナ社のSDGsに関するアクション、および達成目標の策定に携わるサミットの運営を行うために、公募から選ばれた8名がサミットボードのメンバーとなり、小澤さんは昨年10月にその責任者であるCFOに選ばれた。
【関連ページ】未来を変えるCFO誕生。/ユーグレナ社(外部リンク)
優秀な人材が海外に流出、それは深刻な課題
CFOという役職についたことを、小澤さんはこう語る。
「高校生一人で声を上げて活動していくのと、企業の大きな力を借りて活動するのでは影響力が違う。学校ではなかなかディカッションできない環境問題のような話題を、ユーグレナ社のフューチャーサミットの場で真剣に話せるという、それ自体がとても貴重なことだと思っています」
中1の頃に学校の授業でSDGsについて勉強し、中3では原発問題に関心を抱き、自身で勉強を重ねたという。それもあり、現在はSSH(Super Science High School)という文部科学省に指定された先進的な理数教育を実施する高校に通い、「フラボノイドと腸内細菌の関係」についての研究を行う、研究者のタマゴでもある。
「アントシニアンという試薬がとても高額で、高校生なので資金が足りなくて、研究を進めるのが厳しいんです。海外の先進国と比べて、研究者の環境が日本はよくないと思う」
巷間よく言われるように、日本の基礎研究を軽視する傾向に、小澤さんは特に危機感を感じている。ユーグレナ社のCFO応募に際しての提出論文でも、この問題について考察をしたという。
「私の先輩も、優秀な人たちはハーバードや海外の大学に行ってしまう。それって優秀な人材ほど日本から流出しているってことですよね。資源大国でもない日本がこれから勝負していくには学力や人材、テクノロジーしかないはずなんです。でも、研究者の環境がよくなくて、大学院に行くにもとてもお金がかかるのでみんな海外に行ってしまう。どんどん自分の首を絞めているんじゃないかなって見えます。日本はこれから、より世界で飛躍する先進国になるか、反対に廃れていくかのどちらかなんだと思います。日本がいかに優秀な人材の能力発揮を抑えてしまっているかということは、私にとってはすごく深刻な問題です」
ここ20年の経済成長率の低さは昨今よく取り上げられるイシューだ。上向いていかない社会、成長しない国に若い人が魅力を抱けないのは当然だろう。自身が成長できる場所を求めて転職するのと同じく、成長意欲の高い優秀な人材こそ流出してしまうのだ。
17歳の目から見た、2040年の日本の未来は?
では彼女から見た2040年は、どのように想像できるのだろうか?
SDGsでいうと、8番目の"働きがいも経済成長も"にいちばん関心があるという。
「例えば37歳だったらば私は子どもが欲しいので、より子どもが育てやすい環境であってほしい。もしそうなっていなかったとしたら、私も海外に行ってしまうかもしれない。私がいたいと思える日本であって欲しいし、そうなるための努力をしていきたいと思います」
高校生でありながら名刺を持ち、株主総会にも出席して、会社を代表する一人として活動する。多くのビジネスパーソンと交流することで、視野が広がり、柔軟な考え方ができるようになったと、自身の変化を彼女は語る。
「この仕事をしていく中で、世の中には将来のことを考えている人がたくさんいるんだってことを理解できました。そういう人たちがもっと表にでるような世の中に日本はなるべきです。例えばいまのソーシャルメディアを見ていても、表面で捉えがち、自分が知らないことに対して偏見を抱きがち。お互いに理解しあえることが必要だと思う」
VUCAの時代、不確実性の時代といわれる。未来を見通すことは難しい時代だからこそ、大人たちもより柔軟な考えが必要だし、若い人から学べることが必ずあるはずだ。彼女にこう聞いてみた。
──あなたの描く未来に耳を傾けたいと思っています。なにをいちばん大人たちに伝えたいですか?
「もっと子どもの声に耳を傾けて欲しいと思っています。年齢は関係ない。うちのサミットメンバーにも最年少で11歳がいるんですけど、彼が見ている世界って本当に大人顔負けだと思いますから」
──若い人だからこそできることには、例えばどんなことがありますか?
「直球で言うなら、忖度していないです。自分が本当に興味があることに直進していけるのが若い人たちの強さ。だからやりとげていく力があるんだと思います。大人はゴールを設定してからそれに取り掛かることが多いけれども、それだと無理やりひねり出すことも多いのかなって思います。若い人たちはまったく逆で、考え方や発想が身の回りのことから生まれていることが多い。そこから生まれてくるクリエーティブには価値があると思う」
若い人は若い人なりの感性で、しっかりと社会を感じ、危機感や未来観を抱いていることが伝わっただろうか? そこにいま耳を傾けていくのは、大人にとってもむしろ興味深いことなのではないだろうか? 未来を確実に予言することなど、誰にもできないのだから。
写真:三浦エリ